トロル

1日事務所にこもって巨大な入札案件の見積書を作っていた。

同業者間に広く募られているものらしく、いつも提示している価格べースとは単位そのものが違ってその変換に難儀したのだけど、なんとか明日の朝には提出できそう、と思ったところで当のお客さまからメールが届いた。「単位変換が面倒だと方々から言われたし当方でも集計に手間がかかるのでやっぱりいつも御社が使っている単位で見積もり出してくれればいいです、ごめんね」。ほほーう。

もちろん実際のメールはもっとかしこまった文面だったけれど、つまり僕の行った今日1日の作業は完全な徒労になったわけだ。エクセルを埋めるあの精緻な命令は水泡に帰し、導かれた正しい数字たちは虚無に吸い込まれた。「この単位で値段出したらちょっと正確性に欠けるし実際に取引きが始まってから不便では…?」とは思っていた。思っていたけどお客さまに言われたことは守らねばならない。多少面倒であっても。いろんなところから文句が出るくらいの面倒具合であっても。それが営業マンたるものである。でもまあメールを読んで「ああやっぱり文句出たんだ」とは思った。

メールを閉じた瞬間いろいろがどうでもよくなって、荷物をまとめてさっと家路についた。今日はお酒を飲んでいい日だと確信したので道すがらでコンビニに寄ろうと思っていたのに、気が抜けていたせいか気づけばそのまま家に着いていた。うん、まあこういう日もある。ってこれ昨日も書いたな。