こまめにねじを回す

昨日はクリスマスプレゼントを贈り、貰って、止まっていた腕時計の電池と切れていた台所の電球を替え、長年酷使して千切れかけていたLANケーブルを新調した。今日は髪を切って映画を見に行く。

台所が明るいと料理がし易いし、ちゃんと動く時計が手首にあるのはいつでも正確な時間が知れて便利だし、LANケーブルの接触のせいで急にインターネット接続が切れたりしないのも、Oh…how stress-free…!って感じがする(普通に日本語で「なんて快適なんだろう」というよりこっちの方が僕の心情に沿っている)(英作文が正確かどうかは別として)。

便利な何かを知らないこと、少しの不便さを放っておくこと、時計が少しずつ遅れていくみたいに、生活が淀む原因はそういう些細なことからじゃないかと思う。

 

細部に宿る

今年の新卒枠で営業部に入ってきたのは専門学校卒の21歳Kくん1人だけで、彼は僕にとって部内唯一の後輩にあたり、僕は一応その教育係ということになっている。21歳といったら僕の4つ下の妹と同い年なのでちょっとした隔世の感があるのは否めないのだけれど、それにしても、と思ってしまうくらいKくんは日本語が拙くて、僕は彼の文章を見るたびにあー、という気持ちになる。

「A社はB社よりも規模の小さな会社ではあるが製品の種類が豊富で、大手デパートや量販店でも、必ず売り場に一定以上の棚を確保できている」

これをKくんに言わせる、というか書かせると

「A社はB社より小さいが、A社はたくさん商品を出していて、大手デパートや量販店でも必ず見かけるほど、A社の商品は多い」になる。

会議の議事録をとるのは新人の仕事なのだけれど全編通してこんな感じの文が続く。日本語としては間違っていないけれどスマートでない、この、如何ともしがたいモヤモヤ感、ムズムズ感を誰にも相談出来ずにいる。「ちょっとこの文章すげー頭悪そうだから直してよ」と言っても一朝一夕で直せるようなものではないし、そもそもKくんはそういう文章を大真面目に書いているのでどこがいけないのか分からない。問題の根が深い。

課長から「Kは作文が苦手っぽいから社外提出用と社内回覧用の文章は一旦目を通してあげて」と頼まれたのがこの悩みの発端なのだけれど、社外提出用と社内回覧用の文章っていったらもうKくんの作る書類全部だ。そんで全部の文章がこれだ。課長とKくんが結託して僕の気を狂わせようとしているのかもしれない。

あともしかしたら僕が神経質過ぎるのかもしれない。文章はそれが他人の目に触れる可能性がある以上第三者・読み手を意識して書かれるべきであって一定以上の明瞭さが確保されていなければいけないし明瞭さを突き詰めるにはある種の美意識が必要不可欠である…というのが僕の持論なのだけど会社の文章にそれを求めるのは行きすぎているのかもしれない。また僕が僕の中で設定しているまとまった文章とはかくあるべし、というようなハードルが高すぎるのかもしれない。Kくんに文章に対する美意識の有無を問うのはちょっと違う気がする、そして問うたとしても「??」という反応が返ってくるのは目に見えているので別の角度から尋ねてみた。「Kくん新聞とか小説とかどれくらい読む?」

「あー読まないですね」

読もう!

ディスコ

昨日は会議の後会社の忘年会があり、今日は高校の頃からの友人Uに誘われFear,andloathinginLasVegasとTheTelephonesの2マンライブを見、ラーメンを食べて立ち飲み屋で飲んで帰ってきた。忘年会はまさに無礼講という感じでとても面白かったし、まったく予習していなかったライブも踊らないともったいない感じで良かった、シンセサイザーは素晴らしい楽器である。

ラーメンを食べながらUと話して盛り上がったのは「こちらがユーモアを含ませようと意図を持って発した言葉が向こうに伝わらなかったときの気まずさと、どんなに頑張っても『おかしみ』みたいなものが伝わらない相手はいて、多分それはこれまで身を置いてきた環境が自分と違ったのだからある程度割り切らないといけない」ということ、そして「彼女にする女性は最低限ユーモアの水準が(映画を見ていて必ず同じところで笑う、なんてベタな高望みはしないにしろ)同じくらいでないといけない」ということだった。

もちろん自分たちが100%面白いとは言わないけれど、これは面白いんじゃないかな、と放ったボールが虚空に消えていくのはやっぱり耐えがたいものだと思う。乗りツッコミまでは流石に要求しない、「ああ、今のこいつの発言はこういう意図があるんだな」というのを理解してくれるだけでいい、つまらなかったらつまらないと言ってくれても全然いい、こちらの思惑が確かに伝わっているんだということを示してさえ頂ければ。でも世の中にはそういう形而上のキャッチボールが難しい方々も居るので、どうしたものかな、という感じ。おい僕らは何様なのだ、という思いもあるけれど、この人とはちょっと合わないな、という気持ちの源泉を辿れば、そこにはユーモアの感じ方の相違があるんじゃないだろうか。年をとって、たくさんの人々と関っていくとそういう違いがどんどん目につくようになる。自然と他人に対する好き嫌いが多くなってくるけれど、それはすこし寂しいことなのかもしれない。

立ち飲みはいつも行くところに行った。おじいさんかおじさんしか居ないはずの空間にマダムと呼んでも差し支えない方がいらっしゃって少し談笑した後、「若くて可愛いから」という理由で瓶ビールをごちそうになる。これからも出来るだけ若く可愛くありたいと思った。ビールが貰えるから。

10月と11月の読書

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愛の夢とか / 川上未映子

リアル鬼ごっこ / 山田悠介

若きウェルテルの悩み / ゲーテ

眼球譚(初稿) / オーシュ卿(G・バタイユ)

2か月で4冊。少ない。リアル鬼ごっこは「僕だったらここはこう書くな」が延々続いて、読み進めるのにものすごく時間がかかった。頭を煮えさせる読書がしたいとは書いたけれど、そういうことじゃない。4冊の中では若きウェルテルの悩みが群を抜いて面白かった。主人公ウェルテルの恋慕と葛藤、苦悩には感情移入せざるを得ない。圧倒的高密度・高カロリーの文章、翻訳書でこれだから原文をそのまま読んだら熱が出るんじゃないかと思う。読みかけで置いてある本が5、6冊ある。年内に片付けたい。

 

スパークリング

金曜の夜に実家に帰り両親と飲んで、翌土曜日は午前中祖母の日用品の買い物に付き合って病院の送り迎えをして映画を2本見、夕方から会社の後輩と飲みに行った。翌日は動物園に行って劇場で映画を見てモツ鍋を食べた。

盛りだくさん過ぎたので何を取り上げて書けばいいのか分からないけどとても楽しかった。祖母に編んでもらっていたカーディガンが完成したので着て帰る。先週は大変だったので褒美を進ぜられた形である。シャツに羽織るだけで非常に暖かいので嬉しい。暖かい。カッコイイ。複雑な模様なのに軽い。のに暖かい。深い緑色をしている。ありがとうございます。これからも頑張ります。

トロル

1日事務所にこもって巨大な入札案件の見積書を作っていた。

同業者間に広く募られているものらしく、いつも提示している価格べースとは単位そのものが違ってその変換に難儀したのだけど、なんとか明日の朝には提出できそう、と思ったところで当のお客さまからメールが届いた。「単位変換が面倒だと方々から言われたし当方でも集計に手間がかかるのでやっぱりいつも御社が使っている単位で見積もり出してくれればいいです、ごめんね」。ほほーう。

もちろん実際のメールはもっとかしこまった文面だったけれど、つまり僕の行った今日1日の作業は完全な徒労になったわけだ。エクセルを埋めるあの精緻な命令は水泡に帰し、導かれた正しい数字たちは虚無に吸い込まれた。「この単位で値段出したらちょっと正確性に欠けるし実際に取引きが始まってから不便では…?」とは思っていた。思っていたけどお客さまに言われたことは守らねばならない。多少面倒であっても。いろんなところから文句が出るくらいの面倒具合であっても。それが営業マンたるものである。でもまあメールを読んで「ああやっぱり文句出たんだ」とは思った。

メールを閉じた瞬間いろいろがどうでもよくなって、荷物をまとめてさっと家路についた。今日はお酒を飲んでいい日だと確信したので道すがらでコンビニに寄ろうと思っていたのに、気が抜けていたせいか気づけばそのまま家に着いていた。うん、まあこういう日もある。ってこれ昨日も書いたな。

明るい日

重い荷物を積載し急傾斜で勢いのついた台車の取っ手を営業車にぶつけてウィンカーを完璧に壊した。普段ならまあお前馬鹿か気をつけろよという感じですごく叱られるところだけど、昨日後輩が営業車で事故を起こし、朝礼で会社の車の扱いについて厳重注意を言い渡された直後の出来事だったために、お前は本当に馬鹿だ人の話を聞け間抜けという感じでものすごく叱られることになった。

今までもらい事故に遭いこそすれ自分の運転によって会社の車を損なったことはなかったし、これからもないように気をつけようと思っていた矢先にいきなり死角からやられた感がある。まず昨日の今日でタイミングが最悪だったし取っ手の高さも荷物の重さも坂道も丁度ウィンカーを壊すためにセットされたかのようで、何ものかの作為を感じずには居られない。誰だあんなところに車を停めたのは。僕だ。

朝からこんな調子だったので意気消沈して仕事をし、今日は22時前に帰ってきた。明日も明後日も多分そのぐらいの帰宅時間になると思う。こういう日もある。星野源のうたが頭の中でずっと流れている。