覆水

盆。

12日。仕事を早目に切り上げて明日から連休! という勢いのまま上司の家のガレージでバーベキューをした。若手なので集合時間より早めに出向いて火を起こす。最近の着火剤はすごく性能がいいので、大した労力を使わずに瞬く間に高出力の炭火が焚ける。大人数で火を囲んで肉を焼いて食べる、というのは人類の原初のよろこびを体現していて良い営みだと思う。余ったお酒をたくさん持たされて帰った。

13日。高校からの友達Yさんの家に呼ばれて、クレープをたくさん焼いて食べた。中国への留学から帰ってきた友達Kちゃんと久しぶりに会う。高校のときから変わっていない。中国の高校で日本語を教えるか、こっちで公務員をやるか決めかねているそう。「大学を卒業してからずっと綱渡りのような生活をしている」とKちゃんは笑っていたけれど、話を聞いている分には最高に楽しそうな人生だと思う。中国の風習として「結婚」は「現金一括での自宅購入」がセットになっているとのこと。僕は中国じゃ一生結婚できそうにないなと思った。会話の流れでYさんの友達のJさんにベースを教えるよう頼まれる。安請け合いしてしまったけれど、ただ長くやってるだけなので僕が体系的に教えられることはほとんどない。参った。

14日。祖父の初盆だった。こまごました手伝いをする。お経をあげて、折りを食べてビールを飲む。親戚の集まるイベントの度に「嫡男」というワードが僕の背中に乗っていることを実感させられる。本家の長男という単語はダブルの礼服くらいの重さで、黒いネクタイくらいの息苦しさ、慣習というか、そういう一族の中での立ち位置みたいなものが未だに影を落としているあたり、田舎だなあと思う。

15日。インド映画の「きっとうまくいく(原題3idiots)」を見た。先日両親が見に行ったとのことで(僕と妹が実家を出てからデートの回数が増えているらしい、喜ばしい)、母から「ものすごく良かったから見てきなさい」と結構な熱量で勧められたのだけど、果たして、ものすごく良かった。友情と人生の話。インド映画なのでもちろん歌と踊りもあって3時間ぶっ通し、でもそんなに長く感じなかった。母曰く「映画であんなに泣いているあの人(父)見たの初めてだった」とのことだったけれど、やっぱり息子を持つ父親、という立場で鑑賞すると、より迫るものがあったんじゃないかと思う。劇場を出てから1人、立ち飲み屋でビールを飲んだ。

16日。遅く起きると祖母が「今日はいつまで居れるん?」と訊いてきたので「いつでもいいし、お昼どこか食べに行こうか?」と返す。祖母は見るからに嬉しそうにしてくれて、こっちまで嬉しくなった。助手席に祖母を乗せラーメンを食べに行き、日用品の買い物に付き合う。祖母はよく喋った。もしかしたらスーパーにある全ての品物に対して、祖母は祖父との何らかの思い出を持っているのかもしれないと思った。全部聞いてあげたいなーという気持ちで相槌を打っていた。

 

6連休も今日を合わせて残り2日だ。今日は大阪からYが遊びにくる。ビアガーデンに行く予定。この連休もなんだかんだお酒を飲んでばかりいる。明日は歯医者の予約をしてある。連休最終日になんて予定を入れてしまったんだと自分で思う。