痛み記録3

神経を抜いた歯の根元の痛みは沈静化したものの、それに隣接する前歯に再び北風が吹くようになって、時間が経つにつれ熱をもち脈動し始めた。確かに鼓動を感じるしその拍子も取れるのに、肝心の患部は歯なので触ってみても指には何も感じず変な感じ、頭の中に不快感と変拍子の痛みだけがあった。

土曜日は会社の新年会があって幹事をしたのだけど、痛みのピークが宴会のさなかに来たために飲食が全く出来ず、「痛み」と「宴会の進行状況」の2つに半分ずつ思考を支配されていた。翌日曜日には歯茎の腫れも歯の中の痛みも嘘みたいに消えていて、咬合に若干の違和感があったけれど台風一過的な趣きを感じた。

3度目の通院となった今日は初回・2回目とはまた別の先生だった。過去2回でけっこうバリバリ施術してもらったはず、こうも長く痛むものなのかどうなのか……という不安でいっぱいだったから、治療の後たくさん質問させてもらった。「神経を抜いた方は奥部に若干の炎症が残っているため消毒と消炎を続けて経過観察。じきに直る」。「新たに痛みだした前歯は神経をとった方の歯が動いたため圧迫されていて、過去の治療痕もあってかなり痛んだだろうけれど、神経自体は既に自然死しているようなので遠慮なしにかなり削った。今回は薬を詰めて次回塞ぐ」とのこと、宴会の日の猛烈な痛みは神経の最後の断末魔だったのではないかと思う。日曜の朝感じた趣きは死の静寂だったのだ。

「レントゲン見ていただくと分かりますけど下の歯と隣の歯が密着してるせいで、この歯には全く“遊び”がなくなってしまったんですねー」

遊びなし、働き詰めはさぞやつらかったことだろう、死んでしまうのも頷ける。人生と同じ。遊べるときに遊ぼう。