痛み記録

年明け早々左前歯の根っこに風を感じるようになった。昨年中に粗方駆逐したと思っていたが甘かった。虫歯である。冷たい飲み物はもちろん温かな食べものさえ染みるようなり、しまいには何もせずとも常時痛みが荒い脈を打つようになった。不快な痛みは集中力を根こそぎさらっていく。痛み止めを服用しつつなんとかごまかしていたけれど、ズキズキの周期がどんどん短くなっていき、先週の金曜日、ついに我慢の限界がきた。朝一で近場の歯科医院に電話をかけると、運良く予約キャンセルがあったとのことですぐに飛び込むことができたが、新規営業の電話は毎回かなり躊躇するのに、痛みに尻を叩かれるとこんなにも行動的になれるのだなと思った。背に腹は代えられないというか、病院も歯科医院も、顧客を純粋に痛みから解放する商売は儲かって当然、という気がする。人間は痛みの解消を最優先に動くしお金もそれなりに払う、そうしないとやっていけないからね……。

レントゲンを撮ってもらってちょっと削ってみると、「ああ、これもう直前まできてるって感じなんで、痛いわけですね」と診断され、結局神経を抜かれることになった。「神経抜きますよ」「はい」というやりとりだけで、その日初めて出会った人間に、本来身体の奥底に大事にしまわれているはずの部位が抜かれる。現代社会はやばい。

クイックな治療でも痛みがちゃんと消えれば何も文句はない。しかし、残念ながら火曜日になった今日までずっとなんか痛い。我らがインターネットによると神経を抜いて一週間くらいは断続的に痛みが続くことがあるそうだ。治療後に貰った鎮痛剤は早々に飲み干してしまったのでバファリンロキソニンで急場を凌いでいる。一時の隙間風的なものすごい痛みはなくなったし、日を追うごとに痛みの頂上は低くなっている気がしないでもないのだけど、神経が絡む痛みは何かしら不安が残るので、とにかく早く完治させたい。新年からやる気が削がれて悔しい。