知らない

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9月に入ってから会社へ弁当を持参するようになったり煙草を控えるようになったり、生活を律し正す意識は更なる高みへ、という感が強く、週末は合コンに呼ばれたり友達の女の子とデートっぽいものをしたり昼間からアルコールを嗜んだり、まあ客観的に見ればとても楽しくやっているように見えるのではないかと思うけれど、いかんせん諸々の楽しい出来事のあと、それらの高揚より圧倒的に大きな質量をもって僕のそばにやってくる「何もないひとりの時間」の影が濃すぎるのは、「楽しい!」という感情の大袈裟な輝きとの落差もあって本当に目眩のする思いである。このところ朝夕の気温も下がってきて、網戸越しの雨の音と涼しい空気の中、寝起きに目覚まし時計を止めながら「わーさびしい」と呟いてしまったのは、自分でもちょっとヤバイな、と思ってその場で笑った。

節制の甲斐あってか体調はすこぶる整っていて健康というよりほかなく、咳どころかくしゃみもなかなか出ない状態なので、差し詰め「屁をこいてもひとり」といったところ、今住んでいるアパートの隣の一軒家には五十がらみのおじさんが住んでいて、朝早くと夜遅く、洗面所から、のどの奥に絡まる痰を一生懸命吐き出す明瞭なサウンドが毎日のように聞こえてくるのが、僕の「なんだかなあ」を日々加速させている。「洗面所の窓、閉めてください」。冒頭のモールス信号の訳文である。これをどうやっておじさんに伝えるか、おじさんがモールス信号を解せるか。以上2点が目下の懸案事項ですが、あー、ここまでで何か質問のある方は?